2011/3/20 Sunday

アメリカ大学院 RAの面接の心得

Filed under: 留学 — ono @ 23:43:52

チャールズ川の氷が溶け、ボストンの長い長い冬の終わりが見え出す三月中旬。今年もMIT大学院の合格を手にした新入生たちが、続々とオープンハウスでキャンパスを訪れる季節になった。うちのラボにもRAを求めて多くの新入生が訪れ、僕もその何人かを面接した。彼ら彼女らの頭の良さはMITに合格する時点で折り紙つきで、甲乙付け難い。しかし、誰を研究室に入れたいかとなると、優劣は比較的ハッキリと付く。今回面接した学生たちの中で僕が気に入った二名は、教授が気に入った二名とピッタリと一致した。気に入られる学生には明らかな傾向がある。この記事では、選ぶ立場から見たRA面接のコツを書きたいと思う。

日本の大学においては、学生は研究室に「配属」される。つまり、学科が一元的に生徒を先生に割り当てる。一方、アメリカの大学においては、学生は研究室に「雇用」される。各教授は個別に学生をRA (Research Assistant)として雇い、スポンサーから獲得した研究費を用いて学費と給料を払うのだ。RAを求める学生に対して、教授はミーティングという名の面接を行って、取るか取らないかを判断する。詳細は僕が昨年に掲載した記事「レンガを積むが如く」を参考にされたい。

まず断っておくが、僕はまだ一介の博士学生でしかなく、誰を取るかを最終的に判断する立場にない。また、航空宇宙工学科におけるAI/制御の研究という、非常に限定的な分野での経験でしかない。以下の情報は一般的なものではなく、あくまで僕個人の経験に基づいた参考意見と思って読んで欲しい。とはいえ、アメリカの大学院に五年半在籍し、研究室の中では新入生の面接を先生に任されるシニアなメンバーであることから、日本から来る新入生に対しある程度は役に立つアドバイスが出来ると信じている。以下の情報について追加や異議のある先生方や留学生の方、是非ご指摘願えれば幸いである。

僕の私見では、RA面接において強い印象を残すために効果的なのは次の三点だ。
1. 研究/プロジェクトにおける経験を具体的に語れること
2. 実用的なスキルを持っていること
3. 自信のある話し方をすること

1. 研究/プロジェクトにおける経験を具体的に語れること

僕はこれが最も重要な要素だと思う。「僕はロボティクスに興味があり、関係する授業を履修してAを取った。あなたの研究室で行っている研究はとてもクールなので、ぜひ加わりたい」などと、とても抽象的な言葉で語る学生がいる。マイナス要素は全く無いのだが、これでは他の大勢の頭の良い学生たちから頭一つ抜け出すことができない。

面接する側の印象に残るのは兎角、具体的な情報である。

もちろん、学部を卒業したばかりでは論文を何本も出せるほど研究結果が積みあがってることは稀だし、教授もそれを期待してはいない。しかし、それでも具体的に語ることはできる。例えば僕が東大での学部時代のプロジェクトの経験を具体的に語れば、こうなる:”I participated in a project that designed and manifactured a remote-sensing satellite. I programmed a software and desined a circuit board for the satellites’ communication subsystem. The 8kg hand-made satellite was successfully launched to the law Earth orbit and became operational in 2009.”

あるいは僕の学部時代の卒業研究を具体的に語ればこうなる:”In my bachelar thesis, I conducted a feasible study of a nano-class astrometry satellite that measures a stellar parallax with 1.8 milliarcsecond precision, in collaboration with the National Astronomical Observatory of Japan. I analyzed the attitude stability of the satellite by modeling its flexible body dynamic in a computer simulation. My analysis helped the team to make an important design decision: remove the satellite’s flexible solar paddles in order to avoid vibration. The satellite is scheduled to be launched in 2011.”

上記の説明を読めば、研究内容自体がなにやらスゴそうだと思えるかもしれない。しかし実際には、僕の学部時代の研究成果は、ごく平均的な学部生レベルのものでしかない。全ては話し方の問題だ。そのトリックは3で後述する。

繰り返す。重要なのは「具体的に」語ることだ。プロジェクトの場合は、プロジェクトの目的は何か、プロジェクト内での自分の役割は何だったか、プロジェクトへいかなる貢献をしたか、プロジェクトはどんな成果をあげたか、その経験を通じて何を学んだか、などを、できるだけ具体的な言葉で語る。研究の場合は、研究の目的は何か、未解決の問題は何だったか、それを解くためにどのようなアプローチを行ったか、自分のアイデアの何がイノベーティブだったか、どのような結果が得られたかを、できるだけ具体的な言葉で語る。立派な研究成果がなくても、論文が一本も無くても、恥じることは決してない。

日本の学部生の多くは、四年次に一年間、研究室に配属され研究を行い、卒業論文を書いた経験を持つ。これは非常に大きなアドバンテージだ。アメリカの学部では研究は必須ではないことが殆どで、卒業論文を書く者も少ないからだ。卒業研究を具体的に語ることは、この上なく大きなアピールとなる。

2. 実用的なスキルを持っていること

僕の教授のバックグラウンドは人工知能/コンピューターサイエンスのため、彼はプログラミングのスキルを非常に重視する。もちろん、それが絶対的な要件では決して無い。しかし自分が即戦力であることをアピールする強力な根拠となるのは間違いない。どんなスキルを持つ人を求めているかは教授によりけりだ。コンピュータプログラミング、CADソフト、有限要素法解析ソフト、電子回路設計、機械加工・・・。何か役に立ちそうなスキルを持っているなら、是非積極的にアピールするべきだ。「不言実行」が美徳の日本だと「俺はあれもできる、これもできる」と口先でアピールするのは憚れるが、アメリカでは何も話さなければ何も出来ないものと思われる。

3. 自信のある話し方をすること

日本では謙虚な人が好まれる。対してアメリカでは、自信に溢れた人が好まれる。

普段から謙虚な日本人が英語を話すと、英語の不得手と相まって、小さな声で悪びれたように下を向きながら、とても自信なさそうに喋る。相手が自分の英語を聞き取れず、眉間に皺を寄せて”Huh?”と聞き返そうものなら、もう日本人は萎縮し石化してしまう。それではいけない。

たとえ自分の英語に自信がなくとも、虚勢でもいいから自信満々に喋らなくてはいけない。胸を張り、相手の目をしっかり見て、大きな声でハッキリと喋る。余裕のあるスマイルを浮かべることが出来れば満点だ。

話の内容も、日本でのやり方とは変える必要がある。一般的に、ネガティブな内容は聞かれない限り一切言う必要がない。例えば、上で例示した人工衛星製作のプロジェクトは数十人規模の比較的大きなプロジェクトで、学部生だった僕はそのヒラ・メンバーの一人として、非常に小さな役割を果たしたに過ぎなかった。リーダーシップを取る立場にいたわけでもない。しかし、そんな謙遜はアメリカでは一切不必要であるどころか、有害ですらある。もちろん、決して嘘をついてはいけないし、他人の業績を自分のものとして語ることは許されない。ただ単に、自分が行ったポジティブなことを、謙遜せずに語ればいいのだ。

英語のポイントも二点挙げておく。一つ目は、自分が行った貢献については、Iを主語とした能動態を使うこと。”I was in charge of the design of the circuit boards”と言うよりも、シンプルに能動態で”I designed the circuit boards”というほうが、力強く、自信があるように聞こえる。

二つ目は動詞のチョイスだ。同じ能動態の文でも、とりわけ説得力を伴って聞こえる動詞がある。”Action verb”などと呼ばれるものたちだ。たとえば「製作する」を意味する動詞なら、makeよりもfabricate, manifactureなどがよりactiveな動詞だ。”I made the circuite board”と言うよりも、”I fabricated the circuite board”と言うべきだ。Action verbsの一覧は、MIT Career Officeのページにまとめられている。

以上の二点はレジュメ作成の際にも当てはまる。僕のレジュメがホームページに公開されているので、参考にされたい。RA面接の際には、このようなレジュメを持参するとよい。

これから渡米する日本の学生の幸運を心から祈っている。

2010/11/29 Monday

【告知】海外大学院留学説明会開催のお知らせ(早、慶、名、東、京、九)

Filed under: 留学 — ono @ 8:02:32

3年前に思いつきではじめた留学説明会の活動が、全米の留学生の協力を得て、今冬は全国6大学で開催するまでに拡がりました。

大人たちは日本の若者を「内向き」だ、などと言います。しかし、僕たちの世代はそんな内向的じゃない。しっかり外を向いているけれども、ただ
情報がないから、周りに前例がいないから、一歩を踏み出すのに少し躊躇してしまっているだけなのです。この説明会は、そんな人たちに正しい情報を提供し、ほんの少しだけ背中を押してあげるためのイベントです。ふるってご参加ください!

私たち米国大学院学生は、海外大学院への学位留学を志す皆さんを支援する目的で、在米日本人留学生たちにより設立された団体です。学位留学について知っていただくために、12月下旬に全国6大学において「海外留学説明会」を開催します。会場は日程順に、早稲田・慶應・名古屋・東京・九州・京都の各大学です(詳細は本メール末尾をご参照下さい)。参加をご希望の方は、参加登録をお願いいたします:

皆さんは日々の研究や勉強に、十分な充実感をお持ちでしょうか。もし現状に物足りなさを感じているならば、海外の大学院へ学位取得のために留学する「学位留学」という選択肢を、ぜひ考えてみてください。

欧米のトップの大学院の多くでは、学生はRAやTAによって学費を全てカバーされるだけでなく、生活費としての給料も支給されます。世界中から集まった優秀な学生たちと切磋琢磨する環境は刺激に溢れ、挑戦する目標には事欠きません。そんな素晴らしいチャンスがあること、そしてきちんとした情報に基づいて準備をすれば、そのチャンスは実は手の届く距離にあること。この2つを、米国留学中の学生の生の声を聞いて知っていただくことが、本説明会の目的です。

参加費はどの会場も無料です。各会場の参加事前登録をお願いしています。事前参加登録なしでも聴講いただけますが、万が一、会場が満席になった場合は、参加登録をされた方を優先させていただきます。事前参加登録・説明会の内容・地図などは、米国大学院学生会のHPへアクセスし、各会場の詳細をご覧ください。
http://gakuiryugaku.net

◆早稲田大学 西早稲田(旧大久保)キャンパス
日時: 2010年12月20日(月) 午後6時〜午後8時
会場: 55号館 N棟1階 第一会議室

◆慶應義塾大学 矢上キャンパス
日時: 2010年12月21日(火) 午後6時〜午後8時
会場: 創想館セミナルーム1(14棟201室)

◆名古屋大学 東山キャンパス
日時: 2010年12月22日(水) 午後1時〜午後5時(受付開始12:40pm)
会場: 法政国際教育協力研究センター2階 CALEフォーラム

◆東京大学 本郷キャンパス
日時: 2010年12月23日 (木) 午後2時〜午後4時
会場: 工学部2号館1階213号大教室

◆九州大学 伊都キャンパス+遠隔講義システム
日時: 2010年12月24日(金) 正午〜午後2時
メイン会場:(伊都キャンパス)センター1号館1308講義室
遠隔講義システムによって、箱崎・病院・大橋・筑紫の各キャンパスで中継を実
施します(詳細はHPを参照下さい)

◆京都大学 吉田キャンパス
日時: 2010年12月28日(火) 午後3時〜午後5時
会場: 国際交流センターKUINEP講義室

2010/10/4 Monday

日経新聞に載りました!

Filed under: 留学 — ono @ 23:54:45

10月4日朝刊、益田隆司先生のコラム「海外に出ない大学院生 出身校の囲い込み改めよ」に、米国大学院学生会が紹介されています!

僕の名前のみが出ていますが、今夏の留学説明会は東工大の坂本先生とStanfordの宮崎さんが中心となって開催してくれたこと、そして米国大学院学生会の設立・運営には他の多くの方の尽力があったことを付け加えたいと思います。

2009/9/6 Sunday

留学説明会のスライドとビデオ/自分の喋り方を反省する

Filed under: 留学 — ono @ 6:20:19

以前にこのブログで宣伝したとおり、「アメリカ大学院留学説明会」を8月に東大にて催して参りました。

そのスライドをアップロードしました。また、ビデオもYoutubeへアップロードしました。

しかし、僕の喋り方が拙い上に、音声のクオリティーも悪く、声が非常に聞き取りづらくなってしまいました。ヘッドフォンで聴けば、すこしはマシになるでしょうか・・・。坂本さん、西野さんのパートは聞き取り易いので、そちらのほうだけでも。

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説明会には150人近くの生徒さんたちが詰め掛けてくれました。講演後も質問がある人たちが列を成し、何人もの人がメールで問い合わせをくれました。改めて日本の留学熱の高さを実感しました。

しかしどうして、実際に留学をする日本人は依然少ないのでしょうか。留学のハードルが高いからか、あるいは夢を見るだけで何も行動を起こさずに終わってしまう人が多いからでしょうか。どちらにしても、留学を志す生徒さんたちの夢を実現し、世界に羽ばたいた優秀な人材が世の中に貢献していくことに、僕のこの活動が少しでも役に立てばよいと思います。

それにしても。僕の話し方はとても聞き取りづらいですね。ビデオを見ながら猛省しています。まず喋るのが速すぎる。発音が不明瞭。語尾の声量が小さい。「えー」「あー」「うー」が多い。何度も何度も人から指摘され、心がけているつもりなのに、全然改善していない。説明会に参加してくれた皆様、申し訳ありません。これは絶対に矯正しなくては。

2009/8/7 Friday

アメリカ大学院 留学説明会のお知らせ

Filed under: 留学 — ono @ 12:22:17

[追記:9/5]お陰さまで留学説明会は大盛況でした。スライドとビデオをアップロードしました。[追記おわり]

帰省中の8月19日(水)午後1時より、東大にて、「アメリカ大学院 留学説明会」を催します。ぼんやりと留学に憧れている方、何がなんでも海外志向の方、どんな方でも興味があればぜひお越しください!!!

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日時:8月19日(水) 13:00~14:00

場所:東京大学工学部 工学部11号館1階講堂 (地図はこちら

講演者:
小野雅裕 (マサチューセッツ工科大学 航空宇宙工学科博士課程)
坂本啓 (東京工業大学 大学院理工学研究科 機械宇宙システム専攻・助教)
西野麻理 (カリフォルニア大学サンフランシスコ校 生化学博士課程)

後援:
東京大学工学系研究科・工学部 国際交流室
MIT日本人会
Science and Technology Leadership Association

「アメリカの大学院生はお給料をもらって勉強している」という事実は、あまり日本では知られていません。アメリカのトップの大学院では、学生のほとんどは、Research Assistantship(RA)やTeaching Assistantship(TA)によって学費を全てカバーされるだけではなく、毎月の生活費をまかなうのに十分な給料も支給されています。経済的な心配をすることなく、世界中のエリートが集まる最高の環境で勉学に励み、学位を取ることが出来る、そんな素晴らしいチャンスがあることを皆さんに知っていただくことが、説明会の目的です。

交換留学や語学研修だけが留学ではありません。学位の取得を目的とした長期の留学は、苦労は多いけれども決して高いハードルではなく、そこで積む濃密な経験や、その後に拓ける国際的なキャリアは、他の何からも得がたいものです。

説明会では、アメリカ大学院のシステムから、出願方法、留学準備、奨学金やRAの探し方、卒業後の進路、海外生活の小ネタまでを、講演者自身の留学経験を基にお話します。

お誘い合わせの上、ふるってご参加ください。

2008/2/5 Tuesday

さよならだけが人生だ

Filed under: しんみり, 留学 — ono @ 19:55:07

土曜日の朝、MITで一番お世話になった先輩を、空港で見送った。

彼は恐らく、両親以外で僕の今まで人生に最も大きな影響を与えた人だと思う。僕が留学という道を選ぶ直接的なきっかけを与えてくれたのは、間違いなく彼だった。留学への漠然とした憧れだけをぶら下げながら、具体的なアクションを何も起こすことなくモラトリアムを謳歌していた大学三年の夏、日本に帰国中の彼と出会った。彼が語ってくれた留学の話は、まさに目から鱗だった。アメリカの大学院では、国籍に関係なく、学費を免除され生活費まで支給されながら勉強することができることを知り、もはや憧れるだけでアクションを起こさずにいる理由を失った。挑戦すべき目標が定まった。僕の人生が幹から枝分かれした。

MITに来てからも、彼にはお世話になり続けた。授業や研究のアドバイスから確定申告の方法まで、嫌な顔ひとつせずに相談に乗ってくれた。僕が今までMITで生き残ってこれたのも、彼に負うところが大きい。

彼はMITの航空宇宙でPhDを取得し、今週からNASAのJPLで働くそうだ。NASAは9・11以降は外国人を滅多なことでは雇わなくなった。その慣例を破っての就職は、彼の傑出した能力の証左であり、ボストンの日本人コミュニティーの誇りだ。

一昨日の空港には、早朝だというのに12人もの人が見送りに集まった。重量制限ぎりぎりの荷物を抱えて、彼は保安検査のゲートの中へ去って行った。空港からの帰りの車は一人少なくなった。寂しいのはもちろんのこと、いままでみんなが頼ってきた柱が抜けてしまった不安も感じた。

翌日も、別の先輩を空港に見送った。STeLAでお世話になった先輩で、彼のプラグマティックな物の考え方と、勉強熱心で決して知ったかぶりをしない姿勢を非常に尊敬している。彼は半年前にMITを卒業して日本に戻っていたのだが、先週は学会でボストンに来ていたのだ。半年前に空港での見送りをし損ねたので、その仕切りなおしだった。

前日と全く同じ場所で、彼を見送った。恥ずかしがりの彼は、照れくさそうにゲートに入っていった。また一人少なくなった帰りの車の中で、次は誰だろうね、俺はまだまだかな、そんな話をした。

時間は過ぎ、ぽつりぽつりと人が去ってゆき、残った人たちが1マスずつ進んで、できたスペースに新しい人が入ってきて、そうして日常は循環し、時間は過ぎ、もう1マス進むとまた誰かが去っていき、新しい誰かが入ってきて、それは自分が去る時まで続く。

「さよならだけが人生だ。」

だからこそ人生は面白いんだ。

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2007/12/19 Wednesday

アメリカ大学院 留学説明会

Filed under: 留学 — ono @ 17:43:54

きのう、東大にて、「アメリカ大学院 留学説明会」なるものを催してきた。ふとした思いつきで2週間前に発案した企画だったにも関わらず、工学部国際交流室、STeLAと、友人達の協力のおかげで、大教室を埋め尽くす150人もの人たちが集まってくれた。

説明会のスライド>


以前、中国人の友達に「なぜ日本人はあまり留学に来ないのか?」と聞かれ、答えに詰まった挙句、「国民性」などと答えたことがある。「島国だから、みんな外に出たがらないんだ。」と説明しても、彼の頭の上には「?」が十個くらい並んでいた。しかし、きのうの説明会の盛況を見て、それは間違いだったと気づいた。島を出たがっている人は沢山いる。何らかの理由で「出て行かない」だけなのだ。150人とは、MITにいる全日本人の数の倍である。数だけではない。きのうの説明会終了後は、大勢の人が質問の列にならび、打ち上げの飲み会にも、数人が飛び入りで参加してくれた。ガスは既に充満している。ならば、僕の仕事は、マッチを擦るだけだ。

では、出たいのに出てこないのは何故だろう。理由はふたつあると思う。ひとつは、単純にチャンスがあることを知らないからだ。僕自身、昔から漠然とした留学への憧れがあったが、それは決して具体的な目標でも確固たる決心でもなかった。そもそも、学位取得を目指した長期留学のチャンスが存在することすら、全く知らなかった。年間600万円もの留学費用をまかなうには、企業からの派遣などに頼る以外に方法はないと思っていた。しかし、大学三年の時、MITへ留学していた先輩と偶然出会い、アメリカの大学院の学生の大半はRAなどで学費を免除され、給料まで貰って勉強していること、そして外国人にも平等にチャンスが与えられ、努力次第で道は拓けることを知った。チャンスの存在を知り、そのチャンスを実際に掴んだ先例と出会ったことで、僕に充満していたガスに火がついた。

二つ目の理由は、「規定のコース」を外れることへの不安だと思う。これが、僕のような一般の学生としての留学ではなく、交換留学や企業派遣など、日本での身分をキープしたままでの留学を選ぶ日本人が多い理由でもあろう。元々、僕が留学に憧れた理由のひとつに、「規定のコース」に従って生きることへの嫌悪感があった。しかし、いざ留学のチャンスを掴んだ時、僕の心に立ち現れたのは、同級生たちとは違う道を歩むことへの不安だった。このあまのじゃくな感情はしかし、留学を目指す多くの人に、一般的なものではないか、と思う。

だから、今回の説明会の目的も二つある。一つ目は短期的な目的で、先輩が僕に対してしてくれた役割を、僕が日本の後輩たちに対して果たすことだ。ガスを体いっぱいに充満させて説明会に来てくれた人たちに、火をつけることだ。

二つ目は長期的な目的で、日本から海外へ向かう大きな流れを作ること、そして、もうひとつの「規定のコース」を作ることだ。「規定のコース」と「規定外のコース」の差とは、先例が多いか少ないか、でしかない。ならば、先例をたくさん作ればいいのだ。きのうの説明会に来てくれた人の何人かが実際に留学をし、その人たちが将来、別の人たちをモチベートし、その人たちが留学をしたのち、さらに次の世代の人たちを導き…そのような循環をスタートすればいいのだ。

最近、僕が囚われ続けている言葉がある。
「世の中から受けた恩は、世の中に返さなくてはいけない。」
留学仲間が言っていた、そんな言葉だ。その言葉を思い出すにつけ、25歳になっても未だに世の中から恩を受け続ける一方の自分を、少々後ろめたく感じる。そろそろ僕も得た経験を少しずつ世に還元し始めなくてはいけない、そんな思いに駆られたのが、説明会を催したそもそものきっかけだ。僕の今までの25年は、怖くなるほどの幸運に恵まれた人生で、世の中から受けた恩は誰よりも深い。残りの人生でこの莫大な借金を完済できるのだろうか。どうやって返せばいいのだろうか。良くも悪くも、留学したのち、人生の目標が一度リセットされてしまった。これからが正念場だ。

あと30分ほどでベトナムへ発ちます。 メールをくれた方、ごめんなさい、返信は帰国後に・・・。

2007/8/17 Friday

遂にフィニッシュ、修士論文!!

Filed under: やったぜ!!, 留学 — ono @ 13:25:26

遂にフィニッシュ、修士論文!!

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身一つでアメリカに乗り込んで丸二年。本当に山あり谷ありだった。日本の同級生たちに、半年の遅れをとっての修士卒業。やー実に感慨深い。

本当にいろいろと苦労した。指導教官がみつからない。授業の宿題を消化しきれない。主張したいことの半分も伝わらない。でも、そうして人より苦労した分、人よりいい経験がつめたはず。思い返してみて、本当に分厚い二年間だった。

これで一区切り。明日の朝の飛行機で日本へ。アメリカに帰ってきたら、別の指導教官の下で、PhDを目指します。

2006/6/17 Saturday

自信

Filed under: 留学 — ono @ 12:38:22

明日、早朝の飛行機で東京へ向かう。東京-ボストンを往復するのは、これで三度目だ。航空宇宙が専攻のクセに飛行機が怖いのは相変わらずだが、慣れるには慣れた。

初めてボストンに来たのは、去年の三月。既にMITから入学許可はもらっていたが、実際に来るかどうかは、相当に悩んでいた。MITでマスター二年目の友人に会い、その悩みを相談したところ、彼はこう答えた。

「自信があるなら来てみれば?」

その五ヶ月後、身一つでボストンに乗り込んだ。旅行客としてではなく、留学生として。今から考えると、あの頃の自分は自信に満ち溢れていたと思う。大きなスーツケースを両手に抱え、ローガン空港へ着いたのが夜11時過ぎ。タクシーの運転手にMITへ行ってくれと告げると、「学生か?」と聞かれ、誇らしげに「九月から学生になるんだ」と答えた。疲れているはずなのに、翌朝早くに目が覚めた。気分が高揚していたのだろう。

それから十ヶ月。一瞬だった。辛くて帰りたいと思ったことは一度もなかったが、自信が揺らぐことは何度もあった。「Ph.Dを取った後、何をするのか」と聞かれ、答えに詰まる自分に気付いた。十ヶ月で多くの知識や経験を得たが、同時に失ったものもあった。

それに加え、最近は「焦り」も感じる。日本にいる文系の友達は、既に社会の第一線でバリバリに働いている。理系の友達も多くは就職活動を終え、あと半年余りで社会人。研究の方も、みんなそれぞれ結果を出しているようで、シンガポールの学会に行った、スペインの学会にアクセプトされた、そんな話を聞く。一方の自分は、ようやく四ヵ月前に研究室を見つけたばかりで、論文の一本すら出していない。Ph.Dまであと何年かかるか、分かったものではない。日本の友達よりも明らかに遅れている、そんな焦りを感じる。

東大にまだ籍が残っているので、戻ろうと思えば戻れる。でも、自分はなお、ここで頑張ろうとしている。なぜか。やはりまだ自信があるからだと思う。自分は何か大きなことができると、根拠もなく信じている。自信過剰だろうか?自信過剰で何が悪い。自分を信じることが「自信」だ、自分を信じなくては、どこで、どうやって、やっていけるというのか。

十ヶ月前に比べ、ここ最近、自分はダレ気味だと感じる。まあいい。日本にいる一週間は、思いっきりダレよう。そしてボストンに戻ってきたら、十ヶ月前の気持ちに戻るのだ。ダレている自分にムチを打て。結果を出せ。それを教授に認めさせろ。遅れは取り返せる。余分にかかった時間はより深い経験になる。進め。自信を持て。やれば自分は出来るはずだ。そして、なりたい自分になれるはずだ…。

今日は早めに研究を切り上げ、家族や友人へのお土産を買いに行った。昔からお土産選びは大の苦手。MITのロゴ入りグッズもいい加減ネタ切れだろうか。冷蔵庫の残り物を処分し、部屋を片付け、荷物をまとめる。パスポート、I-20、日本円。飛行機が落ちないよう、願掛けのお守も忘れてはいけない。時差ぼけを直すために、今晩は寝ないつもりだ。

十ヶ月で角が落ち、すこし丸くなった僕の自信。それに空気を入れ直し、パンパンに膨らませて、一週間後、ボストンに帰って来たい。



後日記(2007/7/2):今思えば、あの頃の「自信」は、根拠のない自信だったように感じる。そんな自信は、持ち続ける方が有害なわけで、去年のあの頃、自信を少し失っていたのは、通るべき道だったのだと思う。

少しずつ実績を重ねていって、「根拠のある自信」を付けていきたい。

2006/4/29 Saturday

ポツリ、ポツリ

Filed under: しんみり, 留学 — ono @ 12:36:41

今朝、車を借りて、日本に帰国する友達を空港へ送りに行った。肌寒かったが、天気は快晴。Longfellow Bridgeをボストン側へ渡る時、朝日がまぶしかった。20分強で空港に到着。近いもんだ。寮を出るときは「実感がない」と言っていた友達も、空港に並ぶ飛行機を見たら、急に涙声になった。ターミナルに着き、チェックインを済ませ、保安検査のゲートで別れた。

日本では、「いっせーの、せっ」で友達になり、「いっせーの、せっ」で別れがくるが、こっちではポツリ、ポツリと仲間が加わり、ポツリ、ポツリと仲間が去っていく。来週にはスペイン人のJavierが、5月末にはトルコ人のBarisとロシア人のOlgaが。

昨晩、友達の部屋で、彼女のお別れパーティーをした。白いTシャツに世界地図を描き、各々の出身国に国旗を立て、メッセージを添えてプレゼントした。スペイン、フランス、イタリア、ノルウェー、トルコ、ロシア、マレーシア、そして日本。それらの国旗たちを、心の中で線で結び、
「ユーラシア大陸を横断できるな」
なんて調子のいいことを考えた。

昨日集まった友達は、ほとんどがVisiting student。みんなあと半年か一年で帰ってしまう。世界中に散らばる彼らと一度別れたら、また会えるのは、あっても一生で数回だろう。でもそれは、世界中に泊まる家と通訳ができる、ということだ。別れを悲しむのではなく、また会うのを楽しみに待とう。いつか、彼らと、彼らの住む国に会いに行こう。彼らの故郷を線で結び、ユーラシアを横断しよう。

8時半頃、空港から戻り、眠たい目をこすりながらラボへ向かった。途中、クラスルームへ向かう先輩と会った。
「カオリちゃんが帰っちゃいましたよ。」
「そっかぁ。土曜日にはヨシヅミさんも帰国だよね。」

ポツリ、ポツリと別れは続く。でもまたいつか会える。そう信じて、笑顔で彼らを送り出したい。



追記(2007/7/2):一年前に別れたJavierが、来週、ボストンに戻ってくることになりました。もうあの時の仲間が全員集合することはないだろうけど、それでも嬉しいもんだ。

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